ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(英名:James Webb Space Telescope:JWST)は本格稼働してまだ1か月足らずだが、既に様々な偉業を打ち立てている。そして、今回またも新たな発見があったようだ。これまで発見された中で最も古いという、ビッグバンから2億3500万年後に形成された銀河の候補が発見されたのだ。
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JWSTが最初に公開したディープフィールドの画像は発見の宝庫だった
既に先月、JWSTの別のデータで、ビッグバンから3億年後に形成されたという別の銀河が発見されていた。
しかし、今回の記録はそれを更に上回る物だ。宇宙初期に発見されたこの天体は、ビッグバンからわずか2億3500万年後という、これまでで最も古い銀河だという。
CEERS-93316 と名付けられたこの銀河の候補の発見は、z = 16.7 という新たな赤方偏移の記録を打ち立てたと報告されている。CEERSはCosmic Evolution Early Release Science Surveyの略で、JWSTによる撮像のために特別に作成されたものだ。
エディンバラ大学の天体物理学者Callum Donnan氏が率いるこの論文は、王立天文学会の月刊誌「Monthly Notices」に投稿され、査読を経て、プレプリントサーバーarXivで公開されている。
ビッグバン後の最初の10億年間は、研究者達にとって非常に興味深い時期だ。この期間に、宇宙が誕生した後に充満した高温の量子スープは、物質、反物質、暗黒物質、星、銀河、塵など、あらゆるものを形成し始めたと考えられている。
光の移動には時間がかかるため、遠い宇宙から届く光は、そのまま過去に何が起こったのかを写し出してくれている。しかし、初期の宇宙はもっと難しく、あまりにも遠いため、我々に届く光はとても微弱な物だ。
さらに、宇宙の膨張によって、最もエネルギーの高い波でさえも赤外線に近い光線に引き伸ばされてしまい、目に見える天体でさえも読み取ることが難しくなっている。そのため、当時の様子を詳細に再現することは非常に困難だ。
最初の星が誕生する前の時代は、「宇宙の夜明け」と呼ばれている。ビッグバンから約2億5千万年後に始まり、宇宙全体が水素原子の不透明な雲で埋め尽くされていたという。
その後、最初の星や銀河からの紫外線が、中性電荷をもつ水素を再イオン化して初めて、すべての電磁波が伝搬できるようになったのだ。
この「再電離の時代」のおかげで、ビッグバンから約10億年後には、光は再び妨げられることなく輝くことができるようになった。
これまではこの霧のかかった時代について知ることが困難だった。当然ながら、研究者達はこの時代について知ることに飢えていたわけだ。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、近赤外線と赤外線をとらえることができ、これまで宇宙に送られた望遠鏡の中で最も高い解像度を誇る。そのため、研究者は「宇宙の夜明け」ではなく、「再電離」の時期に何が起こっているかを詳細に知ることができるのだ。
Donnan氏のグループによると、CEERS-93316 は、少なくともビッグバン後の最初の銀河の一つにかなり近いものである可能性が高いとのことだ。研究チームは、この薄暗く赤い光を説明する他の可能性を排除し、この銀河の星形成がビッグバン後1億2000万年から2億2000万年の間に始まったことを示唆する分析をしている。
しかし、この天体の正体を確かめるには、さらに分光観測を行う必要がある。その結果、この天体の赤方偏移が確認されれば、さらに詳細な研究が行われ、宇宙初期の天体の調査に役立つと期待されている。
もし CEERS-93316 が銀河だとしても、「史上最も遠い銀河」という記録をそう長くは保持していられないかも知れない。JWSTならきっと更に驚異的な発見をしてくれることだろう。
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