英国のスタートアップ「Viritech」が、ピニンファリーナによる印象的なデザインのハイパーカー「Apricale(アプリカーレ)」を発表した。この獰猛なモンスターは1,000馬力を超えるハイパワーを持ち、重量はわずか1,000kgと、パワーウエイトレシオは驚異の1.0ながら、驚いたことに二酸化炭素を全く排出しないそうだ。
モンスター燃料電池車「Apricale」
Apricaleは燃料電池車だ。タンクに貯蔵しておいた水素と外気に含まれる酸素を使った化学反応によって発電し、そうして生じた電気エネルギーを使って、モーターを回して走る自動車だ。あらかじめ必要な電力を充電しておき、必要なときにそれを消費しながら走るBEV(Battery Electric Vehicle:バッテリー式電気自動車)とは異なる。
Apricaleは、1,000kgを下回る重量となっており、1,000馬力以上の出力を誇る自動車の中で最も軽い車のひとつとなる。同社のコアテクノロジーである軽量な「Graph-Pro™」水素貯蔵タンクが、この驚異的な軽さを実現している。Viritechが特許出願中のGraph-Proテクノロジーは、軽量の複合材料とグラフェン対応の樹脂システムを使用しており、タンクがカーボンファイバーシャシーの構造要素の一部に組み込まれているのだ。これにより、重量を最小限に抑え、パッケージングを改善したという。
Apricaleは、700気圧の圧力で約5.4kgの水素を搭載することができる。この水素を「数百キロワット」の燃料電池に通して発電し、フロントとリアに搭載された2つの400kW(536馬力)の電気モーターに直接送るか、または搭載されている6kWhの高性能バッテリーを充電するために用いるか、この決定は同社の「Tri-Volt™」エネルギー管理システムにより行われる。Tri-Voltエネルギー管理システムは、燃料電池とバッテリーの両方から、出力比率を柔軟に変えることで、より効率的に、そしてよりパワフルな走行を可能にしている。さらに、非常に高速な充電および放電バッテリーを搭載しており、回生ブレーキシステムは従来のバッテリー式電気自動車の何倍もの運動エネルギーを回収できるという。
基本的に搭載されているバッテリーは、1,000馬力ものパワーが必要なときに、短期的にブーストパワーを供給するためにあるようだ。ただし、Viritechはそれほど頻繁にあるわけではないと考えているようで、実際に1,000馬力を出せるのは非常に短い時間に限られる。
Apricaleは、時速322km以上で走行可能だ。また、水素が満タンの状態で560kmの走行が可能とされている。そして当然のことながら、ゼロエミッションだ。
Viritechは、BEVの普及が加速している現状を認識し、それを認めつつも、特にトラックなどの大型輸送車両は、BEVではバッテリー大型化の問題やバッテリーの製造にかかるサプライチェーンの問題を指摘しており、より多面的な電力貯蔵のソリューションとして、水素(燃料電池車)を併用して行くことが地球の将来にとって望ましいと考えている。
実際に、BEVは航続距離の問題や、充電に長時間かかるという問題などもあり、長距離移動には向かず、どちらかと言えば街中での普段使いに向くのが現状だろう。その点、燃料電池車ならば、現在のガソリン車と同じ感覚で、燃料の水素が必要になれば水素スタンドに行き、5分もかからず補充することが出来る。
ViritechのCTO Matt Faulks氏はこう述べている。
Apricaleは、さまざまなエネルギーベクトルがもたらす利点を完全に見直すことを可能にしました。これまで、エンジニアリングの選択肢は有限であり、妥協の産物でした。しかし、水素をミックスすることで、まったく新しい能力が生まれ、私たちはFCEVへの新しいアプローチでその最適化を図ろうとしました。Apricaleは、そのオーナーにとって驚くほどエキサイティングなものになるでしょうし、パワートレイン技術の新しい章を開くものであると、私たちは心から願っています。グッドウッドでそのビジョンが実現したことをうれしく思います。
このマシンは25台のみ製造され、2024年に納車が開始される予定だ。
コメントを残す