ノーベル物理学委員会の仕事は、大変ではあるが実に魅力的な仕事である。一番楽しいのは、受賞者が人生最大のニュースを電話で聞いたときのショックを受けた受賞者のリアクションを聞くことだ。
また、ノーベル賞受賞者がどのように選ばれるかについてプレゼンテーションをすることもある。ノーベル・シンポジウムの参加者の前で行うこともあれば、高校のクラスの前で行うこともある。この話題は大きな関心を呼びがちだが、そのプロセスはあまり理解されていないことに気づいた。
しかし、受賞者がどのように選ばれたかを説明するのは一筋縄ではいかない。一方はノーベル賞の公式ウェブサイトから引用した資料、もう一方は50年以上前のもので、もはや秘密ではない事例研究に頼らざるを得ない。
ノーベル委員会は、スウェーデン王立科学アカデミーによって任命された6~8人の委員で構成されている。賞の選考は3つのパートに分かれている。まず、非常に重要なのが推薦である。委員会は毎年9月と10月に世界中の研究者に約3000通の推薦状を送り、翌年の1月31日を締め切りとする。
推薦者のリストには、元ノーベル賞受賞者、北欧諸国の物理学教授、スウェーデン王立科学アカデミーの会員など、必ず特定の人物に相談するよう規定されている。
そのほかにも、一度に数年間だけ推薦を依頼される人々がいるため、この部分は定期的に入れ替わる。最後に、多くの大学が、推薦のために何人かの教員に相談するよう要請され、再び大学が持ち回りになる。
第二部では、専門家による報告が行われる。推薦に基づき、委員会は、受賞の対象となりうるレベルの発見や発明があった物理学の特定の分野を特定する。
委員会は次に、これらの分野の専門家から極秘の報告を求め、彼らがこれらの発見や発明をノーベル賞受賞の動機となるに足る重要なものであると考えるかどうかを尋ねる。もしそうであれば、最も重要な貢献をしたと考える人物を特定するよう求められる。
最後は委員会の仕事である。6月の初めに委員会が開かれ、最も興味深い受賞候補者のショートリストが作成される。委員会での議論は常にオープンで鋭く、率直で、時には感情的になることもあるが、決して敵対的なものではない。
例えば、1920年代初頭には、Albert Einsteinr(アルベルト・アインシュタイン)を受賞させようとする大きな圧力があった。しかし、相対性理論に懐疑的な委員もいた。妥協案として、Einsteinは代わりに光電効果と呼ばれる現象の説明に対して賞を授与することになった。
驚くべきことに、現代物理学のもうひとつの成功理論である量子力学がノーベル賞を多数受賞しているのに対し(1932/33年、1945年、1954年、2022年)、相対性理論が明確に受賞するまでには2020年までかかったのだ。
最終段階
夏の間、各委員は各自で最終受賞報告書の特定の部分を準備する。8月の研究集会で、委員会はこの報告書をまとめ、スウェーデン王立科学アカデミーに推薦する。夏の間、委員会メンバー同士のミーティングは何度か行われるが、電子メールや電話での連絡は厳禁である。
最大3人の受賞者の提案と引用を含む報告書は、その後アカデミーに送られる。9月になると、この提案はアカデミーの物理学メンバーの間で議論される。9月の第2回会議で、このグループは委員会からの提案を支持するかどうかの投票を行う。
10月、賞が発表されるのと同じ日に、アカデミーは最終決定を下すために再び会合を開く。決定が下されると、受賞者に電話で連絡が入る。最終決定は記者会見で発表され、その模様はスウェーデンの公共テレビとアカデミーのホームページで生中継される。
発表の翌日には、数人の委員が12月のノーベル賞授賞式で一般公開されるポスターの制作に取り掛かる。
来年のノーベル物理学賞の選考は、今年の候補者が決まる前からすでに始まっている。常に専門家のレポートが議論され、募集される。作業が止まることはない!
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