Google ResearchとGoogle DeepMindは、24時間先まで正確な予報を提供するAI搭載の天気予報モデル「MetNet-3」を開発した。
このモデルは、雨、気温、風速と風向き、露点など様々な側面を予測することができる。
研究チームによると、MetNet-3は、複数地域の予測や24時間先までの予測に関しては、High-Resolution Rapid Refresh(HRR)やEnsemble Forecast Suite(ENS)といった従来の数値天気予報(NWP)モデルよりも能力が高いという。
AIによるリアルタイム気象予報
MetNetモデルの特徴は、他の気象予測モデル(NWP)のデータに頼るのではなく、大気の直接観測データを学習と評価に用いることである。MetNet-3は、気象観測所からの観測値を入力とターゲットとして使用し、全地点の予報を作成しようとしている。
このモデルの主な革新点は、データ同化(実データを使用)とシミュレーションをニューラルネットワーク内の1つのステップで組み合わせた高密度化と呼ばれる手法である。MetNet-3は、各変数と場所の確率分布を予測し、平均値以上の情報を提供する。
研究チームによると、高密度化とリードタイム・コンディショニングおよび高解像度の直接観測を組み合わせることで、2分の時間分解能で詳細な24時間予報が可能になるという。
Googleチームによると、24時間全体の降水量予測におけるMetNet-3の性能は、予測精度の指標であるCRPS(Continuous Ranked Probability Score)で測定したところ、ENSよりも優れているとのことだ。
Google製品の気象予測機能が向上
Googleによると、MetNet-3のリアルタイムシステムは、アメリカ全土とヨーロッパの27カ国の降水予報を数分ごとに、最長12時間まで提供することができるという。
このシステムは、複数の情報源からの最新データを使用して予報を作成し、その精度をチェックし、モデルの結果から学習し、その結果を何百万人ものGoogleユーザーに提供する。
たとえば、モバイル端末で特定の場所の天気情報を検索しているユーザーは、分単位の詳細なタイムライングラフィックスを含む、高度にローカライズされた雨予報データを受け取ることができる。
現在、米国とヨーロッパの一部で利用可能なMetNet-3は、特に12時間雨量予報に重点を置いているようだ。
Googleによると、このモデルは気象情報を処理するさまざまなGoogle製品やテクノロジーで使用されており、”輸送、農業、エネルギー生産など多くの活動の安全性と効率を向上させる”可能性を秘めているという。
論文
参考文献
研究の要旨
ディープニューラルネットワークは、気象状況をモデル化するための代替パラダイムを提供する。データが利用可能になれば、1秒以内に予測を行うことができ、非常に高い時間的・空間的解像度で予測を行うことができるニューラル・モデルの能力、および大気観測から直接学習する能力は、これらのモデルのユニークな利点のほんの一部に過ぎない。最も忠実度が高く、最も遅延の少ないデータである大気観測を用いて学習されたニューラル・モデルは、現在までのところ、最新の確率的数値天気予報モデルと比較した場合、リードタイムが12時間までしかなく、降水量という唯一の変数に対してのみ良好な性能を達成している。本論文では、観測に基づくニューラル・モデルが予測できるリードタイムの範囲と変数の両方を大幅に拡張したMetNet-3を紹介する。MetNet-3は、密なデータと疎なデータの両方のセンサーから学習し、降水量、風、気温、露点について24時間先までの予測を行う。MetNet-3は、データ同化を暗黙的に捉え、ネットワークが極めて疎なターゲット上で学習しているにもかかわらず、空間的に密な予測を生成する重要な高密度化技術を導入している。MetNet-3は、それぞれ最大2分と1kmの高い時間分解能と空間分解能を持ち、また低い運用待ち時間を持つ。我々は、MetNet-3がHRRやENSのような最良の単一および複数メンバーNWPを24時間先まで上回ることができ、観測に基づくニューラルモデルの新たなマイルストーンとなることを発見した。MetNet-3は運用中であり、その予測は他のモデルと共にGoogle検索で提供されている。
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