新しい研究によって、我々の銀河系の近くに存在するいて座矮小楕円銀河が、銀河系をゆっくりと突き破り、何度も恒星の軌道を破壊していることが明らかになった。
研究者たちは、欧州宇宙機関の宇宙観測所「ガイア」のデータを使って、銀河系全体に位置する2000万個以上の星の動きを比較したと、LiveScienceは報じている。
- 論文
- Monthly Notices of the Royal Astronomical Society: The disturbed outer Milky Way disc
- 参考文献
この分析により、銀河が互いに引き裂かれ、その構造が何世代にもわたって変化してきたという、銀河の激しい過去に新たな光が当てられた。
宇宙を駆け巡る“波紋”
研究者たちは、天の川銀河の円盤の外側に焦点を当て、星の軌道に干渉していると思われる謎の波紋を明らかにした。
スウェーデンのルンド大学の天文学者である研究者Paul McMillan氏は、「我々は、これらの星がぐらつき、異なる速度で上下に動いていることを見ることができます」と声明の中で述べている。
研究チームは、波紋効果が銀河系を歪めていることを説明する可能性のある波紋パターンをモデル化した。「銀河地震学」と名付けられたその手法は、波紋が数億年前に放出された可能性が高いという結論に至った。
正確には、「いて座矮小銀河」が最後に銀河系に衝突したのと同時期に放出されたもので、これまでにも何度か衝突しているとのことだ。研究者は、この現象は池に石を落とすようなものだと付け加えている。この衝突による波紋は、天の川の外側へとゆっくりと移動し、移動するにつれて強度が弱まっていった。
銀河の共食い
銀河系の衛星銀河であるいて座矮小銀河との衝突によって、銀河の中心部に波紋が生じた可能性はこれまでの研究で示唆されていたが、今回の研究によって、この波紋が銀河の外側にまで及んでいることが初めて明らかになった。
天の川銀河と他の銀河との相互作用は、私たちの故郷である銀河の形や構造に大きな影響を及ぼしている。例えば、2011年の研究では、天の川銀河の渦状腕は、いて座矮小銀河との衝突によって形成されたことが示唆されている。
今回の発見は、私たちの銀河系が過去に共食いしていたことについての知識を深めるものである。銀河系は、数十億年の間にいくつかの小さな銀河を飲み込んだことが知られており、いつかは隣のアンドロメダ銀河に飲み込まれるかもしれないと推定されている。
研究の要旨
天の川銀河の円盤の外側は、著しく平衡状態から外れている。Gaia の初期データリリース3から、|b| < 10°, 130° < ℓ < 230°の範囲の星の距離と固有運動のみを用いて、銀河中心から約10~14kpcの間のディスクの星について、鉛直速度が角運動量、方位角、銀河面上または下の位置に強く依存していることを明らかにした。さらに、この振る舞いが、天の川外縁部の星の速度分布の二峰性にどのように反映されるかを示す。我々は、天の川円盤と射手座矮星に似たパーターバーとのインパルス的相互作用のN体モデルを用いて、このメカニズムが同様の擾乱を発生させうることを示す。この相互作用により、太陽近傍で見られるような位相スパイラルを発生させることが既に示されている。我々は、この銀河外縁部の部分構造の詳細は、摂動のタイミングや銀河の重力ポテンシャルに非常に敏感であり、それゆえ、天の川の歴史と構造を解明する鍵となる可能性があると主張している。
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