フルフィルメントの最先端について知りたいなら、Amazonを見れば良い。同社は過去10年間で多くの買収と開発により、倉庫の自動化を進めてきた。これまでもAmazonは同社の巨大倉庫内でロボットを活用してきたが、今回これまでとは異なる「初めての完全自律移動ロボット」を開発した。名を「Proteus」と呼ぶ。
最適なルートを自分で考え運搬するロボット「Proteus」
これまでにもAmazonではカート運搬用にRoombaの様な形をしたロボット「Kiva」を活用していたが、これは決まったルートを移動するのみで、なおかつ人が立ち入らないような制限エリア内での稼働に限定されていた。
Amazonが新たに発表した「Proteus」は、カメラとレーザースキャナ、そして高度なAIによって周囲の状況を認識し、臨機応変に対応して目的地に荷物を運ぶことが可能となっている。ロボットが動き回るときに目の前で緑色のレーザービームを放っており、人間がビームに足を踏み入れると、ロボットは動きを停止し、人が離れた後に再開するように、障害物を自動で検知する機能も搭載している。詳しくは以下の動画をご覧頂くのが分かりやすい。
GoCartとAmazonが呼ぶ運搬車の下に入り込み
グイッと持ち上げて
そのまま目的の場所まで移動させることが出来る。この動きはこれまでの「Kiva」と同じ物だ。
Kivaと異なり、広い倉庫内を自由に動き回りながら、最適な経路を自分自身で考えて移動する。
レーザースキャナにより、目の前に障害物や人が来た場合は停止するようになっている。人が立ち去るとまた移動を再開する。
必要な時は自分で充電ステーションに向かい充電することも出来る。
初めての完全な自律移動ロボットであると、Amazonは同社のブログ投稿で述べている。
Proteusは、Amazonが開発した高度な安全技術、知覚技術、ナビゲーション技術を使って、当社の施設内を自律的に移動します。このロボットは、自動的な指示で作業を行い、従業員の周りを移動するように作られています。つまり、制限された場所に閉じ込める必要がないのです。このロボットは、テクノロジーと人との間のシンプルで安全な相互作用を補う方法で動作することができ、例えば、施設内での荷物の移動に使用される非自動運転の車輪付き運搬車であるGoCartの持ち上げや移動など、従業員を助けるための幅広い用途が期待されるのです。
Amazon
Amazonは、ロボットの導入は人の仕事を単に置き換える事ではなく、人と機械がお互いの欠点を補い合いながら働いていくのが理想と考えている。
Proteusは、最初はフルフィルメントセンターとソートセンターのアウトバウンドGoCart処理エリアに配置されます。私たちのビジョンは、ネットワーク全体でGoCartの処理を自動化することです。これにより、人々が施設内で重い物を手動で移動する必要性を減らし、代わりに、よりやりがいのある作業に集中できるようになります。
重い荷物を人間に代わって分類する「Cardinal」
大きな荷物や重い荷物の持ち上げや回転、限られたスペースでの複雑な梱包を必要とする作業を処理することにより、従業員の負傷のリスクを軽減するために考案されたのが、「Cardinal」だ。乱雑に積み上がった荷物の山の中から、荷物を1つずつ素早く持ち上げて、ラベルを読み取り、適切にカートに分類することが出来る。
荷物はコンベアを通じて乱雑に流れてくる。
縦に転がった荷物も混ざっている。こういった物にも対応可能だ。
アームが縦になっている荷物もしっかりつかんで
GoCartに積んでくれる。
いっぱいになったGoCartはProteusがやってきて
所定の位置に運んでくれる。この一連の流れに人間の介入は必要なくなっている。
ハンドスキャナーいらずの超高速スキャンシステム「Amazon Robotics Identification」
現在Amazonでは、荷物を在庫棚から出荷用棚に移動させる際は、手作業で荷物のスキャンを行っている。しかしこの場合、片手にスキャナーを持ちながらもう片方の手で荷物をスキャンすることになり、機動性に問題が生じたり、怪我のリスクが生じてしまう。こういった問題に対して、従業員からのフィードバックにより、革新的なコンピュータービジョンと機械学習テクノロジーを備えたAIを利用したスキャン機能であるAmazon Robotics Identification(AR ID)を作成した。
従業員はカーゴから荷物を取り出して左の黄色の棚に入れるだけでスキャンが完了するという。
画面奥のディスプレイが黄色く表示されているのはスキャン前の状態である事を表している。これが・・・・・・
棚に荷物を入れようとしている頃には緑色になっている。スキャンが完了したという合図だ。スキャンのために一旦停止する必要もなく、スムーズに荷物を入れるだけでスキャンが完了する。
AR IDは、毎秒120フレームで動作する独自のカメラシステムを使用することで、手作業によるスキャン工程をなくし、両手で荷物を扱うことが出来るようになり機動性アップに繋がるという。
このデバイスは空港のスキャナーに似ており、従業員は「自然な動き」でパッケージを素早くスキャンしつつ移動することが出来るという。
コンテナ収納システム「Containerized Storage System」
Amazonでは注文が発生した際には、従業員が商品をピッキングしたり、移動棚に収納しているが、そういった作業の際に従業員がはしごを上り下りしたりする必要がないように、大規模なコンテナ運搬システム「Containerized Storage System」が、従業員に商品を届けるシステムとして稼働している。
このコンテナ収納システムは、ロボット工学とソフトウェアの融合により、どのポッドに必要な商品が入ったコンテナがあるのか、コンテナはポッドのどこにあるのか、どのようにコンテナを運んで従業員の元に運ぶのか、そして従業員がピッキング作業を終えたらどのように戻すのかを自動で判断してくれる。これにより従業員の安全確保、働き方の改善に繋がるという。
Amazonの倉庫自動化の取り組みは、既に10年経過しているが、顧客と従業員のエクスペリエンスを向上させるために今後も続けられていくという。
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