オークリッジ国立研究所の研究チームが、量子コンピュータにおいて、光子にこれまでに比べてはるかに多くの情報を格納できるようにする強力な技術を実証した。研究チームは、8レベルのデータを光子に符号化し、それを簡単に読み出すことに成功し、これまでのシステムを飛躍的に向上させたとしている。
- 論文
- 参考文献
- Oak Ridge National Laboratory: New measurements quantifying qudits provide glimpse of quantum future
- New Atlas: “64-dimensional quantum space” drastically boosts quantum computingFFF
従来のコンピューターは、0か1の値を持つ2進数のビットで情報を保存し、処理するが、これに対して量子コンピュータは、0と1、あるいはその両方を同時に保持できる量子ビット(Qubit)を用いることで、この能力を飛躍的に向上させることができる。しかし、量子ビットの新バージョンである「Qu”d”its」(スペルミスではなく、bではなくdである)は、その性能をさらに向上させる。Quditsには2つの値だけでなく、理論的には数十の異なる値を格納することができ、データ処理とストレージの可能性を大きく広げることができる。また、外部からのノイズによって量子ビットが破壊されても、Quditsは耐えられる。
しかし、当然ながら、Quditsに格納されたデータを測定したり読み返したりすることは困難であるという問題がある。そこで今回、オークリッジ国立研究所、パデュー大学、EPFLの研究者らは、Quditsの生成と読み出しをより確実に行うための技術を開発した。実験では、それぞれ最大8レベルの情報を保持できるQuditsを生成し、それらを対にして量子もつれを行い、64次元の量子空間を生成した。これは、これまでの研究の4倍に相当する大きさだという。
実験ではまず、マイクロリング共振器という小さな円形の構造物にレーザーを照射し、8次元の状態を持つ光子のペアを生成する。このペアの色の周波数がもつれ合い、理論的には最大64値のデータを格納できる量子空間が生成される。
研究者らは、電気光学位相変調器を使って異なる周波数の光を混ぜ合わせ、パルス整形器によってこれらの周波数の位相を変化させることに成功した。これらの機器はすでに電気通信でよく使われているものだが、今回はランダムに操作を行った。これにより、さまざまな種類の周波数相関が生成される。研究チームは、これらの周波数相関を統計的手法とシミュレーションによって解析し、量子情報システムに最適な周波数相関を見いだした。
研究チームは今後、このもつれた光子を光ファイバーで送り、量子テレポーテーションやエンタングルメントスワップなど、量子通信に役立つプロトコルを検証する予定である。
研究の要旨
近年、周波数領域での量子情報処理が注目されている。周波数領域は高次元であり、光ファイバー網に対応したエンタングルメントを持つためである。しかし、このような量子状態のトモグラフィーには、複雑で精密な能動的周波数混合操作のエンジニアリングが必要であり、その拡張は困難であった。そこで、パルス整形器と電気光学位相変調器を用いて、規定された混合操作の代わりにランダムな操作を行う解決策を提案する。その結果、オンチップSi3N4マイクロリング共振器から生成された二光子周波数コムについて、エンタングルメントの検証と密度行列の再構成に成功し、最大8×8次元の二次ヒルベルト空間(周波数ビンとしてはこれまでで最も高い次元)の再構成に成功した。より一般的には、私たちが採用したベイズ統計モデルは、測定能力に制限のある様々な量子システムに適応することができ、利用可能なすべてのデータを最適な方法で利用する日和見的な断層撮影フレームワークを形成することができる。
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