研究者グループは、量子力学の奇妙な性質を利用して、無からエネルギーを引き出すことに成功したと報告している。
2つの異なる物理学の実験で、エネルギーをミクロの距離でテレポートさせることによって、真空からエネルギーを引き出すという偉業が可能であることを証明したという。
この新しい実験は、東北大学の理論物理学者である堀田昌寛氏が2008年に発表した理論に基づくものであると、Quanta Magazineは伝えている。
堀田昌寛のエネルギーテレポーテーション理論
堀田氏の理論は、2008年当時、ほとんど注目されなかった。それもこれも、真空量子からエネルギーを引き出すことは非現実的なものと考えられていたからだ。しかし、今回の実験結果は、そのような科学界の認識を覆す最終的なステップとなるものであることは間違いない。
多くの人が堀田氏の理論を否定したが、実はこの理論は、単に無からエネルギーを引き出すというよりも、もう少し微妙なことを示唆していたのである。堀田氏の理論は、量子力学の原理を利用して、エネルギーがない場所にエネルギーをテレポートさせるというものだ。
マサチューセッツ工科大学の量子物理学者で、今回の研究には参加してないSeth Lloyd氏は、Quanta Magazine誌に次のように語っている。「あなたは実際にテレポーテーションしているのです。あなたはエネルギーを抽出しているのです。」
堀田氏の理論は、物理学者が、量子場のゆらぎによって、近くのエネルギーを真空に引き出して、そのエネルギーを利用するという、テレポーテーションの概念として知られる考えに基づいている。
堀田氏は、2008年に提唱した理論から、負のエネルギーは独立した作用ではないと考えるようになった。そこで彼は、量子真空について研究した。計算の結果、量子真空は量子場の中で揺らぐことができると考えた。これは、エネルギーが異なる2つの領域の間を移動する、つまり「テレポート」できることを意味する。
このテレポーテーションの概念は、ウォータールー大学とストーニー・ブルック大学の科学者によって2度実証された。この2組の研究者は、2つの別々の量子デバイスで、ミクロの距離を越えてエネルギーをテレポートすることを実現し、堀田氏の理論が正しかったことを証明したのである。
何もないところからエネルギーを作り出す
堀田理論に基づき、ニューヨーク州ストーニーブルック大学の池田一毅氏が、IBMの量子コンピュータを用いて初めてエネルギーのテレポーテーションに成功した。
「我々は、実際の量子ハードウェア上で量子エネルギーテレポートを初めて実現し、観察したことを報告します」と池田氏は報告しており、エネルギーをテレポートする能力は、将来の量子インターネットに深い影響を与える可能性があると付け加えている。
また、ウォータールー大学の研究チームは、ある場所でエネルギーを使い切ると、別の場所にあるエネルギー的に真空である空間でエネルギーが利用できるようになることを発見した。
このプロジェクトの研究者の一人で、現在はカリフォルニア大学バークレー校にいる Nayeli Rodriguez-Briones氏は、「現在の技術で、エネルギーの活性化を観察することが可能であることが分かり、非常にすっきりしました」とQuanta Magazineに語っている。
新しい実験の結果について質問された堀田昌寛氏は、「これはSFではありません。現実の物理学です」と答えている。
Source
- Quanta Magazine: Physicists Use Quantum Mechanics to Pull Energy out of Nothing
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