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太陽系で原子時計を使い暗黒物質を測定する計画

暗黒物質は、世界中の天文学者を悩ませ続けている。銀河の集合体や銀河内の重力レンズ効果など、宇宙物質の約8割を占めると言われている暗黒物質だが、地球上ではまだ発見されていない。では、せめて太陽系で検出するのはどうだろうか?『Nature Astronomy』誌に掲載された新しい研究によれば、それが可能かもしれない。

基本的な考え方は簡単だ。もし暗黒物質が宇宙全体にあるのなら、太陽系にも暗黒物質があるはずである。暗黒物質が惑星の軌道などに影響を与え、私たちが測定できるようになるはずだ。しかし、私たちが行っている惑星の運動の観測は、暗黒物質の影響を検出できるほど精度が高くないという問題がある。太陽の近くにある暗黒物質の影響を最も受けるであろう水星でさえも、その誤差を測定することができないのだ。そこで、この新しい研究では、原子時計を使ったより精密な実験を提案している。

理論的には、暗黒物質は通常の物質と重力的に相互作用するため、太陽系の暗黒物質は太陽の近くに最も集中するはずであり、そこで最も大きな影響を受けると考えられている。そこで研究チームは、太陽の近くに原子時計を置き、その原子時計から遠くにある別の原子時計に信号を送ることを提案する。この2つの間で高度に調整された信号を送れば、その地域の重力効果を測定することができ、太陽付近の暗黒物質の密度を決定できるかもしれない。

この実験では、暗黒物質が超軽量粒子で構成されていると主張する、ある種の暗黒物質モデルを検証することもできる。もしそれが本当なら、これらの粒子は電子と微妙に相互作用し、実効質量と相互作用の強さをわずかに変化させるだろう。その結果、原子時計からの信号にもわずかな揺らぎが生じ、それが検出される可能性があるのだ。

このアイデアの面白いところは、このような実験が現在の工学的能力で可能だということだ。小型で低消費電力の原子時計は簡単に入手できるし、宇宙船に搭載することも可能だ。そして、パーカー・ソーラー・プローブは2018年からすでに水星の軌道内で太陽を周回しており、間もなくさらに太陽に近づく予定だ。この実験を行うことは、工学的な課題ではなく、予算的な課題である。

暗黒物質の謎は、いつまで経っても解けないのかもしれない。あまりにも多くの実験が失敗に終わり、その性質の詳細が解明されるまでには至っていないのだ。しかし、今回のような新しい実験は、私たちがもっと探求すべきアイディアを持っていることを示し、私たちが学べば学ぶほど、暗黒物質の証明や代替理論の証明に近づくことができるのだ。

研究の要旨

原子時計を含む近年の量子センサーの進歩により、幅広い暗黒物質候補の探索が可能になった。太陽系内の暗黒物質分布の問題は、暗黒物質直接検出実験の到達範囲に決定的な影響を与える。NASAのディープスペース原子時計とパーカー・ソーラー・プローブに刺激されて、我々は宇宙量子センサーが超軽量暗黒物質探索、特に太陽に結合した暗黒物質状態の探索の新しい機会を提供することを示す。宇宙量子センサーは、超軽量暗黒物質の未踏のパラメータ空間を探索することができ、自然性とヒッグス混合を動機とする理論的なリラクセーションターゲットをカバーすることができることを示す。もし、2クロックシステムが太陽系の内部を測定することができれば、この高感度な領域を直接探査することができ、太陽系にそのような結合状態ハローが存在することに対して、非常に強い制約を与えることができる。我々は、現在および将来の原子・分子・原子核時計に基づいて、電子・光子・グルーオン場と結合する超軽量暗黒物質の宇宙からの探査のための感度予測を示す。

この記事は、BRIAN KOBERLEIN氏によって執筆され、Universe Todayに掲載されたものを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)に則り、翻訳・転載したものです。元記事はこちらからお読み頂けます。

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masapoco

TEXAL管理人。中学生の時にWindows95を使っていたくらいの年齢。大学では物理を専攻していたこともあり、物理・宇宙関係の話題が得意だが、テクノロジー関係の話題も大好き。最近は半導体関連に特に興味あり。アニメ・ゲーム・文学も好き。最近の推しは、アニメ『サマータイムレンダ』

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