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これまでで最多となる14個の量子もつれ状態の光子を生成することに成功

ドイツのマックス・プランク量子光学研究所研究者らは、これまでで最大数となる、14個の光子の量子もつれを達成し、新記録を樹立したと発表した。

量子もつれは、2個以上の量子が古典力学では説明できない相関をもつことで、例えば、一方の特定の性質を変えると、たとえどれだけ遠く離れていても、その相手が瞬時に(光速を超えて)変化してしまうような現象である。

かのアインシュタインも「不気味な遠隔作用」と言い放った程のこの不思議な現象は、まだ科学では説明できていないが、これまで数々の実験によって量子もつれが確かに存在することは証明されてきている。そして、現在では、量子コンピューティングのような、もつれた粒子を用いて情報を保存・処理する新技術の基礎になっているのだ。

マックス・プランク量子光学研究所の研究チームは、ルビジウム原子1個を光共振器の中に置き、そこに光子をぶつけて電磁波を跳ね返させるようにした。光子を用いたのは、もともと頑丈で操作しやすいため、この手の用途に特に適しているためだ。この原子に特定の周波数のレーザーを当てると、原子がある性質を持つようになる。次に、別の制御パルスを照射すると、原子と“もつれあった”光子が放出されるのだ。

「この実験のコツは、1個の原子を使って光子を放射し、それを非常に特殊な方法で織り込んだことです」と、同研究所博士課程研究員のPhilip Thomas氏は言う。

これを繰り返すことで、互いにもつれ合った光子の連鎖が生成される。各発光の間に原子を回転させることで、14個の光子をもつれさせることが出来たと発表している。

研究者らは、これは実験室で原子ともつれ合った光子の数としては最大であるだけでなく、光源から検出までの効率が43パーセントと、これまでに開発されたプロセスの中で最も効率的であるとのことだ。

そして、この研究のハイライトはもつれた光子の量が最大だったというだけではない。「光子の連鎖は、1個の原子から発生するため、決定論的な方法で生成することができます」とThomas氏は説明する。つまり、レーザーのボタンを1秒押すごとに、特定の用途に使える光を1個生成できるということだ。これまで、光子の量子もつれは、通常、特殊な非線形結晶の中で行われていた。しかし、この方法では、光の粒子は基本的にランダムに生成され、制御することが出来なかった。また、集合状態にできる粒子の数も限られていた。

「全体として、私たちの研究は、スケーラブルな測定ベースの量子コンピューティングへの道筋における長年の障害を取り除くものです」と、同研究所のGerhard Rempe部長は成果を要約している。

この研究は、量子コンピューター以外にも、光ファイバーで送られる情報が盗聴されにくい量子通信の発展にも役立つという。研究者が開発した方法により、量子情報はもつれた光子上で送られるようになり、一定の光量損失にも耐えられるだけでなく、通信の安全性も確保されるとのことだ。

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masapoco

TEXAL管理人。中学生の時にWindows95を使っていたくらいの年齢。大学では物理を専攻していたこともあり、物理・宇宙関係の話題が得意だが、テクノロジー関係の話題も大好き。最近は半導体関連に特に興味あり。アニメ・ゲーム・文学も好き。最近の推しは、アニメ『サマータイムレンダ』

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