Amazonは、量子コンピューティングを今後同社のクラウドに導入するための新たな取り組み「AWS Center for Quantum Networking」の立ち上げを発表した。これは、量子コンピュータのネットワーク接続に関する科学と工学を推進するための同社による新しい研究活動となり、より強力な計算用のマルチプロセッサ・ネットワークの構築と安全な量子通信ネットワークの構築の両方を目的としているとのことだ。
量子ネットワークの実現に向けた研究を加速
クラウドコンピューティングの巨人AWSでは、既に一般のユーザーでも量子コンピュータが利用可能なことをご存じだろうか。Amazon Braketでは、IonQ、Oxford Quantum Circuits、Rigetti、D-Waveなどの量子コンピュータや、その他のソフトウェアツール、シミュレーターへのアクセスを開発者に提供している。
近年、AmazonとAWSは、量子コンピューティングに対して多くの大規模な投資を行っている。すでに2つの研究に特化した取り組みとして、AWS Center for Quantum Computingと、Amazon Quantum Solutions Labを進めている。前者は、より優れた量子ビットの構築やエラー訂正アルゴリズムなどの基礎科学に焦点を当てており、後者は、企業が量子コンピューターの将来に備えるための支援に重点を置いた研究を行っている。
基本的に、BraketとQuantum Solutions Labが近い将来の実用的なソリューションに焦点を当てているのに対し、Center for Quantum Computingと今回のCenter for Quantum Networkingは長期的な展望で研究を行っているとのことだ。
「量子デバイスの可能性を最大限に引き出すには、今日のデバイスがインターネットを介して接続されているのと同じように、量子ネットワークに接続する必要があります」と、同社は本日の発表で説明している。「量子コンピュータほど注目されていないものの、量子ネットワークは魅力的な応用の可能性を秘めています。そのひとつが、従来の暗号化技術では実現できなかった、量子鍵配送によるプライバシーとセキュリティで保護されたグローバルな通信を可能にすることです。また、量子ネットワークは、個々の量子プロセッサーを接続し、その能力を増幅することで、強力で安全なクラウド量子サーバーを提供します。」
量子ネットワークの重要性は認識されているが、課題も多い。量子ネットワークでは、通信に光の最小構成単位である単一光子を用いるが、単一講師は、量子ネットワークの多くの特殊機能を可能にすると同時に、量子力学によって増幅が禁止されているため、ネットワークの範囲が制限されるという大きな課題もある。また、単一光子の弱点は、現在の量子コンピューティングデバイスとの連動を難しくしている。このため、グローバルな量子ネットワークを実現するためには、量子中継器や量子変換器などの特別な新技術を開発する必要がある。
今のところ、量子ネットワークに関する研究努力のほとんどは、国が資金を提供する研究所のレベルにとどまっている。商業的な量子コンピューティングの取り組みのほとんどは、プロセッサーレベル(とそれを取り巻くエコシステム)であり、Amazonが今そこに着目しているのは確かに少し斬新だが、特に量子プロセッサーが、ほんの10~20年前にはSFと考えられていたような成熟度に到達し始めていることを考えると、早すぎると言ったこともないかもしれない。
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