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Googleが導入した、あなたを追跡して広告を配信する新しい方法「プライバシーサンドボックス」とは一体何か?

先週末、Googleはプライバシー・サンドボックスと呼ばれるものがChromeユーザーの “過半数”に展開され、今後数ヶ月で100%のユーザーに適用されると発表した。だが、これは一体何を意味するのだろうか?

この新機能は、Chromeが広告主の利益のためにユーザーデータを追跡する方法の根本的な転換を意味する。サードパーティのCookieの代わりに、Chromeは広告の「トピック」(詳細は後述)に関する情報を収集するために、閲覧履歴を直接利用できるようになった。

2019年から開発が進められているこの変更は、一部のコメンテーターがプライバシーの観点から侵略的であるとみなし、大きな論争を引き起こしている。

Chromeは2023年5月時点で63%の市場シェアを持ち、世界で最も広く使われているブラウザであり続けているため(Safariは13%で2位)、この仕組みを理解すること、そしてオプトインするかしないかを決めることは重要だ。

Cookie(クッキー)とは何か?

1994年、Netscapeのコンピュータ・エンジニア、Lou Montulli氏は、「Cookie」を発明し、インターネットの閲覧方法に革命をもたらした。Webは初めて、私たちのパスワード、好み、言語設定、そしてショッピングカートさえも記憶することができるようになった。

この方法は、ユーザーとWebサイト間だけのプライベートな情報交換、いわゆるファーストパーティだけのCookieのはずだった。しかし2年も経たないうちに、広告主はCookieを「ハッキング」してユーザーを追跡する方法を編み出した。これがサードパーティCookieだ。

ファーストパーティCookieは、あなたの好みに耳を傾け、あなたが商品を選んでいる間、喜んでバッグや洋服を預かってくれる店員のようなものだと考えることが出来る。

一方、サードパーティCookieは、古いスパイ映画に出てくる盗聴器のようなものだ。あなたの部屋の中のあらゆることに耳を傾けるが、情報を共有するのは味方だけ。“スパイ”はこのCookieを他の人のサイトに置き、あなたが何を訪問し、どんなデータを入力したかを記録することが出来る。Facebookが、あなたが読んだばかりのニュース記事に関連する広告をあなたに配信したことを不思議に思ったことがあるなら、それはあなたがサードパーティCookieを有効にしているからかもしれない。

欧州連合の一般データ保護規則(GDPR)カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)が導入された2018年までは、Cookieを介した規制のないオンライン追跡と監視がデフォルトだった。Cookieを通知し、同意を求めるポップアップが増えたと感じたら、GDPRとCCPAに感謝しなければならない。

サードパーティCookieのサポートを最初にオフにしたブラウザは、2017年のAppleのSafariと2019年のMozillaのFirefoxだった。

しかし、Googleはオンライン広告の大手企業でもあり、2023年時点でGoogleの収益の57.8%を広告が占めている。ChromeのサードパーティCookieをオフにするのは最も遅れている。プライバシーサンドボックスの導入により、彼らは2024年にCookieをオフにし始めることを望んでいる。

プライバシーサンドボックスはCookieとどう違うのか

プライバシーサンドボックスがどのように機能するかについての詳細は、かなり専門的だ。しかし、最も重要な側面のいくつかを紹介する。

Chromeは、サードパーティのCookieを使用してインターネット上で広告を配信する代わりに、広告トピックと呼ばれるものを提供する。これは、閲覧履歴などローカルで追跡された閲覧行動のハイレベルなサマリーで、企業が特定のテーマに関する広告を配信するためにリクエストに応じてアクセスできる。

さらに、保護された視聴者(Protected Audience)のような機能もあり、「リマーケティング」(例えば、Chromeがトースターのリストを訪問したことを追跡し、他の場所でトースターの広告が表示されるようにする)のための広告を配信したり、アトリビューションレポート(Attribution Reporting)で広告のクリックに関するデータを収集したり出来る。

要するに、サードパーティCookieがスパイ活動をする代わりに、これらのCookieが可能にする機能がChrome内で直接利用できるようになるのだ。

ユーザー追跡は必ずしも悪いことなのか?

Googleはプライバシー・サンドボックスをユーザーのプライバシーを改善するものだと宣伝しているが、誰もが同意しているわけではない。

これらの機能がオンになっていれば、世界最大の広告会社のひとつであるGoogleは、基本的にWeb上のあらゆる場所であなたの声を聞くことができる。

トラッキング技術は、間違いなく私たちに利益をもたらすこともある。例えば、オンラインストアが3ヶ月ごとに新しい歯ブラシが必要であることを教えてくれたり、去年の今頃は母親にバースデーカードを買ったことを思い出させてくれたりする。

このようなリマインダーのような認知的労力を軽減することは、オートメーションが人間を支援する素晴らしい方法である。ピンポイントの正確さが要求される状況で使用されれば、私たちの生活をより簡単で快適なものにすることができる。

しかし、監視されることに抵抗がある場合、サードパーティCookieに代わるものは、必ずしもChromeの新しいプライバシーサンドボックスではないかもしれない。

その選択肢とは、トラッキングを完全に無効にすることだ。

どうすればいいのか?

広告目的でオンライン活動を追跡されたくない場合、いくつかの簡単な選択肢がある。

DuckDuckGoやBraveのような、トラッキングをしないことを最優先とする専門的なブラウザが、圧倒的にプライベートなブラウザだ。しかし、そこまで神経質になりたくないのであれば、SafariとFirefoxはすでにデフォルトでサードパーティのクッキーをブロックしている。

有益なターゲット広告を気にしない場合は、Chrome プライバシー サンドボックスの設定をオンにしておくことが出来る。

これらの設定を調整またはオフにしたい場合は、右上隅の3つの点をクリックし、[設定]>[プライバシーとセキュリティ]>[広告のプライバシー]に進む。これらの機能をオフにすると、Chromeがこれらのデータを完全に収集しなくなるのか、それとも広告主とデータを共有しなくなるだけなのかは不明だ。各機能の詳細については、Google Chromeヘルプページをご覧頂きたい。

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最後に、本当にタダで手に入るものは何もないということを覚えておくと良いだろう。ソフトウェアの開発にはお金がかかる。もしあなたがその費用を負担していないのであれば、それはあなた自身、あるいはあなたのデータが製品である可能性が高い。私たちは、自分自身のデータについて、そしてそれが真に持つ価値について、どのように考えるかを変革する必要がある。


本記事は、Erica Mealy氏によって執筆され、The Conversationに掲載された記事「Google Chrome just rolled out a new way to track you and serve ads. Here’s what you need to know」について、Creative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、翻訳・転載しています。

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masapoco

TEXAL管理人。中学生の時にWindows95を使っていたくらいの年齢。大学では物理を専攻していたこともあり、物理・宇宙関係の話題が得意だが、テクノロジー関係の話題も大好き。最近は半導体関連に特に興味あり。アニメ・ゲーム・文学も好き。最近の推しは、アニメ『サマータイムレンダ』

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