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NVIDIAの独占を切り崩すAIチップスタートアップ「Tenstorrent」が1億ドルの資金を獲得

伝説のチップ設計者Jim Keller氏が創設したAIハードウェアスタートアップ Tenstorrent が、Samsung及Hyundaiらが共同主導する転換社債資金調達ラウンドで1億ドルを調達した事を発表した。

株式とは異なり、転換社債は短期債務であり、事前に設定されたイベントによって株式に転換される。Tenstorrentがなぜ株式ではなく負債を選択したのか、同社の資金調達後の評価も不明である(Tenstorrentはリリースでこれを「アップラウンド」と表現している)

Tenstorrentが最後に調達したのは2億ドルで、その時の評価額は20億ドルを超えていた。この1億ドルの資金調達により、TenstorrentはFidelity Ventures、Eclipse Ventures、Epiq Capital、Maverick Capitalなどからも総額3億3,450万ドルの資金を調達したことになる。

Tenstorrent Samsung Contract
Tenstorrent CEO Jim Keller and Samsung Executive Vice President Marco Chisari

1億ドルの資金調達の内訳は、Samsungから5000万ドル、Hyundaiから3000万ドル、KIAから2000万ドルである。自動車メーカーがTenstorrentを支援するのは、一連の次世代自律走行車の中で将来のAIハードウェアを活用するためだ。

しかし、今回の資金調達の主な目的は、AI分野におけるNVIDIAの独占を崩すことであり、そのためのエンジニアリングの専門知識とビジョンを持つ人物がいるとすれば、それはJim Keller氏だろう。Keller氏は、彼が担当した革新的なZenコア・アーキテクチャでAMDの復権に貢献しただけでなく、AppleやIntelでも次世代コア・アーキテクチャの設計に携わった。Keller氏によると、今回の資金は製品開発、AIチップレットの設計と開発、Tenstorrentの機械学習ソフトウェアのロードマップに充てられるという。

ZDNETの取材に応じたKeller氏は、NVIDIAは現在、AI分野で事実上独占的な立場にあると述べた。NVIDIAのチップ・インフラ(ハードウェアとソフトウェアの両方)を利用するすべてのAIソリューションの収益の大部分をNVIDIAが占めている。

AIチップのスタートアップTenstorrentのCEOであるJim Keller氏は、ZDNETとの独占インタビューで、「NVIDIAは(利益率を)独占している。AIを組み込んだ高性能ソリューションを作ろうと思えば、NVIDIAがその製品のマージンのほとんどを独占することになる。勝者総取り戦略の問題点は、人々が本当に代替手段を求める経済環境を生み出すことだ」。

「正直なところ、標準的な製品でNVIDIAに60%の粗利率を与えることはできない」。

Keller氏は最近東京で開催されたカンファレンスで、NVIDIAのAI GPUと競合するRISC-VベースのAI CPUを開発していることを強調した。基本的な考え方は、AIは常にCUDAやPyTorchのものであるとは限らないということであり、GPUは現在のAIにとって最良のソリューションかもしれないが、将来的にはより優れたAIのパフォーマンスと機能を提供する他の何かが登場するかもしれないということだ。AMD ROCmも最近、開発者向けにCUDAコードとアプリケーションの移植を容易にした。一方、Tenstorrentは独自のオープンソースBUDAフレームワークを開発している。

Tenstorrent RISC V AI CPUs Chiplets Jim Keller

「私は、CUDAやPyTorchが動作するGPUが、AIの最終目標だとはまったく思っていない。宇宙人が着陸したとき、『私たちが CUDA を発明したのですか?』と尋ねるとは思いません」と、Keller氏は、ニューラルネットワークを実行するためのNVIDIAのソフトウェア・プラットフォームに言及して冗談を言った。

「GPUは今日成功を収めていますが、明らかなベスト・アンサーではなく、利用可能だった十分なアンサーに近いものです」。

「我々は、汎用コンピューティングとAIが一緒に動作することになり、両者は緊密に組み込まれる必要があるため、AIプロセッサの汎用コンピューティングコンパニオンとなるRISC-Vプロセッサを構築することにしました」。

そのために、「AMD、Apple、NVIDIAから最高のデザイナーを雇いました」とKeller氏は言う。「我々は素晴らしいCPUチームを持っています」。

とはいえ、Keller氏はNVIDIAが早くからAIとHPCのためのソフトウェアスタックに注力してきたことを評価していないわけではない。

Keller氏は、現在のAIの波は、加速する需要に対応するための最良のソリューションを提供しようとする複数の技術大手や新興企業による「計算戦争」だと見ている。AIはまだ黎明期であり、それが本当に次世代のコンピューティングの原動力となるのであれば、NVIDIAは幸運なスタートを切ったことになる。AMDとIntelはそれぞれのAIファミリーに取り組んでおり、Tenstorrentも数年にわたる将来技術のロードマップを発表している。


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masapoco

TEXAL管理人。中学生の時にWindows95を使っていたくらいの年齢。大学では物理を専攻していたこともあり、物理・宇宙関係の話題が得意だが、テクノロジー関係の話題も大好き。最近は半導体関連に特に興味あり。アニメ・ゲーム・文学も好き。最近の推しは、アニメ『サマータイムレンダ』

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