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ダイエットで減るのは脂肪だけではない

ダイエットをすると、脂肪が減るだけでなく、筋肉も減ってしまう。このことは、体力や筋力だけでなく、代謝にも様々な影響を及ぼす。

体重(体脂肪)を減らすには、カロリー不足になる必要がある。つまり、体内で消費されるカロリーよりも摂取カロリーを少なくするか、摂取カロリーよりも消費カロリーを多くするように運動することだ。

カロリー不足の最初の数日間、身体はグリコーゲンのわずかな貯蔵をエネルギーとして使い果たす。グリコーゲンとは、食べた炭水化物に由来するグルコース(糖)のひも状のものだ。炭水化物は身体の主なエネルギー源なので、身体がすぐに使わなかったブドウ糖は、後でエネルギーとして使うために蓄えられるのだ。

しかし、炭水化物分子は水と結合するため、グリコーゲンを蓄えるときに筋肉にも水分を蓄えることになる。グリコーゲンが使い切られると、体内から大量の水分が放出される。これはしばしば「水太り」と呼ばれるものの原因となる水分で、ダイエットの初期に体重がかなり減ったと感じるのは、その水が抜けるからだ。

グリコーゲンの貯蔵量が数日分しかないことを考えると、必要な時に備えて余分なカロリーを蓄えるために脂肪が使われるのはこのためだ。グリコーゲンを使い切ると、体は機能するために必要なエネルギーを得るために脂肪の代謝に移行する。

しかし、脳など、すべての組織が脂肪をエネルギーとして使えるわけではない。そのため、カロリー不足の時には筋肉を代謝する必要があるのだ。

タンパク質(食べたものから)は筋肉に蓄えられる。身体はこの蓄積されたタンパク質をグルコースに変換してエネルギーにすることができる。しかし、そうなると筋肉組織そのものが失われてしまう。このことは、代謝を低下させ、せっかく体重を減らしても、また体重が戻ってしまうという重大な結果をもたらしてしまう。

筋肉の減少

カロリー不足の間、筋肉がどれだけ減少するかは、多くの要因が影響する。

かつては、脂肪が多ければ多いほど、カロリー不足で失われる筋肉は少ないと考えられていたが、現在では、痩せ型でも肥満型でも、ダイエット中にかなりの割合で筋肉が失われることが分かっている。

しかし、民族や遺伝が関与している可能性もある。黒人は白人よりもカロリー不足で筋肉量が減る傾向があるという研究結果もある。いくつかの研究では、遺伝的変異は、特定の食事の変化に影響を受けやすく、彼らが最終的にどのくらい筋肉量を失うかを決定するかもしれない人もいることを示唆している。

また、筋肉量の減少は、体重を徐々に減らすか、急激に減らすかに関係なく起こる。筋肉がどの程度減少するかは、最終的にどの程度体重が減少するかによって決まる。通常、体重の10%を減らした場合、そのうちの20%前後が除脂肪量(筋肉など脂肪以外の部分の割合)となる。これは数キロの筋肉に相当する。

また、減量中に何を食べるかによって、筋肉がどれだけ減るかが決まると考える人も多く、タンパク質をたくさん食べれば筋肉が減りにくいと一般的に信じられている。これは議論の余地があり、高タンパク質の減量ダイエットでも、他のタイプのダイエットをした人と同じくらい筋肉が落ちるという研究結果もある。

低炭水化物ダイエットも、脂肪の減少を促進すると言われている。しかし、さまざまなタイプのダイエットを比較した研究によると、低脂肪高炭水化物ダイエットは、低炭水化物高脂肪ダイエットと同じか、それ以上の脂肪減少をもたらすようである。

タンパク質と運動

ここまで述べてきたことを踏まえると、減量中に筋肉の減少を多少なりとも防ぐ唯一の方法は、運動(特にレジスタンス運動と持久力運動)とタンパク質を多く含む食事を組み合わせることである。運動は筋肉の成長を促すが、このプロセスはタンパク質が十分に供給されていなければ起こらないからだ。

通常、成人は筋肉量を維持するために、1日に体重1kgあたり0.8gのタンパク質を摂取することを目標にするとよいとされている。しかし、運動によって筋肉に余計な負荷がかかることを考えると、減量中に筋肉を維持するためには、体重1kgあたり1.2~1.5gのタンパク質を摂取する必要があるだろう。運動量が多い人は、減量時に体重1kgあたり2g以上に増やす必要があるかもしれない。高齢者も、平均より多くのタンパク質を摂取する必要があるかもしれない。

ただ、タンパク質の摂りすぎ(体重1kgあたり2.5g以上)には注意が必要だ。体が使う以上の量を食べると、代謝に悪影響を及ぼし、グルコースをエネルギーとして利用できなくなる可能性があるからだ。また、腎臓や肝臓への負担が大きくなり、肝臓や腎臓の障害など深刻な健康問題につながる可能性もある。

減量時に筋肉の減少を防いだとしても、代謝率(体が生きていくために最低限必要なカロリー量)の変化や、食欲や空腹感の増加など、体重の再増加を促す代謝の変化は起こる。そのため、減量を試みる際に最も重要なことは、食事や生活習慣の変化がどれだけ持続可能であるかということだ。これらが維持しやすいほど、体重を維持できる可能性が高くなる。


本記事は、Adam Collins氏によって執筆され、The Conversationに掲載された記事「Weight loss: why you don’t just lose fat when you’re on a diet」について、Creative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、翻訳・転載しています。

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