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NVIDIAのGPUを使って、量子アルゴリズムシミュレーションを行う事に成功

実用的な量子コンピュータの探求は続いているが、この技術を実現するための強力なエラー訂正済み量子ビットを手に入れるまでには、数十年かかるかも知れない。しかし、NVIDIAのハードウェアを利用すれば、古典的なコンピューティングでこれと同等の計算を行う事も夢ではないかも知れない。GPUメーカーは、イスラエルの新興企業Classiq社およびRolls-Royce社と提携し、ジェットエンジン内部の非常に複雑な物理現象をモデリングするための量子アルゴリズムをテストしているとのことだ。

Rolls-Royce社は、エンジンの計算流体力学(ジェットエンジンを設計する際のCFD)のシミュレーションを実施している。現代のジェットエンジンは、時速数百kmで空気を引き込むブレードの回転する口だ。タービンが1秒間に何千回も回転し、エンジンの中を空気がどのように移動するかを理解することは、最も強力なクラシックコンピューターでも簡単なことではない。現在、Rolls-Royce社のエンジニアは、CFDモデルを縮小するか、より低いレベルのディテールを受け入れるしかない。同社では、量子コンピュータがより強力で正確なシミュレーションへの道を開くと信じている。

しかし、残念ながら、2023年に私たちが手にできる量子コンピュータは、この課題に対応できていない。研究に使われている最も高性能な量子コンピュータは、わずか数十個の量子ビット(量子力学的ビット)を持っているだけで、その結果も特に信頼できるものではない。しかし、量子コンピュータが約束するのは、圧倒的な計算能力の飛躍だ。完全に実現した量子コンピューターは、もつれ、重ね合わせ、干渉といった量子力学的特性を活用し、0か1に限定されたビットで可能な計算をはるかに超えるスピードで計算することができる。

Rolls-Royceが開発しているHHLベースのアルゴリズムは、CFDシミュレーションを大幅に高速化する可能性を秘めているが、それを実行する量子コンピュータはまだない。NVIDIAは量子コンピュータのチップではなく、同社が誇る超強力なA100 GPUによって、最新の39量子ビット量子CFD回路を実行した。同社は何枚のカードを使用したかは明言していないが、かなりの枚数であると推測される。

古典的なハードウェアで量子アルゴリズムのシミュレーションを行うには多くの課題があるが、Rolls-Royce社はこの結果に満足しているようだ。同社のLeigh Lapworth氏は、IEEE Spectrum誌に、同社がHHLアルゴリズムを有用なデータを収集できるほど大規模にシミュレートできたのは、これが初めてだと語っている。量子コンピュータへの関心は、整数の因数分解やデータベースの検索といったアプリケーションに集中しているが、Rolls-Royce社でテストされているようなシミュレーションは、この技術がいかに柔軟なものであるかを示すものである。


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masapoco

TEXAL管理人。中学生の時にWindows95を使っていたくらいの年齢。大学では物理を専攻していたこともあり、物理・宇宙関係の話題が得意だが、テクノロジー関係の話題も大好き。最近は半導体関連に特に興味あり。アニメ・ゲーム・文学も好き。最近の推しは、アニメ『サマータイムレンダ』

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