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重力が変化している証拠を、地球で見つけることができるかもしれない

(Credit: Argonne National Labs)

一般相対性理論とは異なる重力モデルの可能性を検証することは、私たちが思っている以上に身近なことかも知れない。研究チームは、地球自体の地震運動を利用して、修正重力の有無を調べることができるかもしれないと提案している。

私たちは宇宙の内容の95%を理解していない。ダークセクターと総称されるこの未知の領域には、ダークマターダークエネルギーが含まれている。ダークマターとは、宇宙で最も重要な物質であり、銀河系には80%ものダークマターが存在していると言われている。一方、ダークエネルギーは、時空間を埋め尽くすエネルギー源で、宇宙の加速的な膨張の原因となっている。

しかし、ダークマターやダークエネルギーが物理的な存在であるという記述は、私たちの重力に関する理解が正しいという前提の上に成り立っている。現在、重力に関する最も良い理解は、アインシュタインの一般相対性理論から得られている。この理論では、重力は時空の曲がりやゆがみの現れであるとされている。

しかし、私たちは一般相対性理論が不完全であることを知っている。ブラックホールの中心や宇宙の始まりでは、一般相対性理論が破綻していることが分かっている。つまり、私たちはまだ重力の全貌を手にしていないのだ。このような背景から、何十年もの間、多くの人々がアインシュタインの原型を拡張・改良した修正重力の理論を提案してきた。

しかし、これらの拡張はすべて、一連の困難なハードルに直面している。一般相対性理論は多くの文脈とスケールで検証されているので、一般相対性理論と大きく異なり、暗黒物質と暗黒エネルギーを説明できる可能性があり、しかも既知の観測的制約をすべて満たす理論を構築するのは困難である。

修正された重力を調べるには、より多くの方法を開発することが出来れば、より良い。そこで、研究者チームは、さまざまな修正重力理論を検証するために、必ずしも星空を見る必要はないことを発見した。その代わりに、地球を観察することができるのだ。研究チームは、修正重力下では、地震波が地球を伝わる速度と方法が異なることを発見した。

地球の質量や慣性モーメントなど、地球の多くの性質がよく分かっているので、この知識を裏返して、地震データを使って修正重力理論を制約することができるのだ。

今のところ、データはアインシュタインの原作から逸脱する必要性を示唆していない。しかし、より多くのツールを開発し、より多くの方法で検索できるようになれば、それに越したことはない。


論文

研究の要旨

パラティニf(R)やエディントンに触発されたボルンインフェルドモデルなどの重力モデルを、地球の地震データを用いて検証することが可能であることを実証する。観測データから得られた地球の慣性モーメントと質量に関する制限を加えることで、モデルのパラメータを2σレベルの精度に制限することができる。この新しいツールにより、パラティニではβ≲109m2、エディントンに触発されたボーン・インフェルド重力ではϵ≲4・109m2が得られる。また、修正重力提案にさらに厳しい制約を課すことを目的とした、提案手法のさらなる拡張についても議論する。


この記事は、PAUL M. SUTTER氏によって執筆され、Universe Todayに掲載されたものを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)に則り、翻訳・転載したものです。元記事はこちらからお読み頂けます。

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執筆者
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masapoco

TEXAL管理人。中学生の時にWindows95を使っていたくらいの年齢。大学では物理を専攻していたこともあり、物理・宇宙関係の話題が得意だが、テクノロジー関係の話題も大好き。最近は半導体関連に特に興味あり。アニメ・ゲーム・文学も好き。最近の推しは、アニメ『サマータイムレンダ』

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