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NASAの研究者たちは原始の地球環境を再現して生命の起源を研究している

現在でこそ、地球という惑星は生命で溢れているが、誕生してからしばらくは、生命の存在しない時代もあった。生命がどのようにして誕生したのかは様々な説があるが、生命の起源を研究しているNASAのジェット推進研究所(JPL)の研究者たちは、昨年、生物誕生前の重要な化学反応のシミュレーションに成功した。そして今回JPLは、その研究に費やした作業と、今後生命の起源を研究する方法について詳しく説明している。

2022年、JPLのOrigins and Habitability Labの研究者は、原始地球の条件に似せることを目的とした閉鎖環境において、重要な代謝反応をシミュレーションしたことを確認した。この反応は、NAD+と呼ばれる分子を硫化鉄鉱物で化学的に還元するもので、私たちが生命を連想するプロセスが、非生物的な地球化学システムからどのように発生するかを示している。しかし、これはパズルの小さな一片に過ぎず、決して簡単なことではなかった。

JPLの研究室には、あらゆるところに生命が息づいている。NASAが「パーサヴィアランス」用の超清浄なサンプルチューブを作ろうとしたとき、偶然にもそのことが証明されたが、生命の痕跡である炭化水素をすべて取り除くと、金属部品の適合性が変わることが判明した。40億年前の地球を再現するためには、原始大気の小さな孤立したポケットを作る必要がある。つまり、現在のほとんどの生命の基本的な構成要素である酸素がないのだ。しかし、生命が誕生する前の地球は、大気中の酸素がごくわずかだった。

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JPLのOrigins and Habitability Labでは、研究者が密閉されたチャンバーを使って酸素のない実験を行い、初期の地球の化学的性質を再現しようとしてる。左から、ラボの共同リーダーであるLaurie Barge、研究員のJessica WeberとLaura Rodriguez (Credit: NASA/JPL-Caltech)

Origins and Habitability Labでは、このような環境を作り出すために、一般的な自動販売機ほどの大きさの「グローブボックス」(上図)を使用している。内部は酸素が入らないように密閉されており、研究者は小さなエアロックを使って物を入れたり出したりする必要がある。内蔵された手袋を使えば、地球の大気から守られた状態で実験を行うことが出来る。しかし、実験結果を評価するための機器もすべて箱の中に収めなければならず、一度に作業できるのは一人分しかない。

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初期地球のイラストには、液体の水と、大きな衝撃によって惑星のコアから染み出したマグマが描かれている。NASAの科学者たちは、地球の歴史の中でこの時期に存在していたかもしれない化学を調査している。 (Credit: Simone Marchi)

研究チームがNAD+反応を実験室で実証するまでには数ヶ月を要したが、JPLの研究科学者Laurie Barge氏が言うように、”科学は繰り返しがすべて”なのだ。研究チームは現在、この環境下での代謝プロセスのさらなる部分を調べ、保護膜の内側でしか起こらないステップをどこかに見つけたいと考えている。単純な脂質膜は自己組織化できることが分かっており、どの代謝過程がそのような環境を必要とするのかを理解することは、膜が最初に発達した時期を解明するのに役立つと考えられている。

JPLの宇宙生物学の研究者は、近傍の惑星や月についてより深く理解できるようになる時を心待ちにしている。生命のない世界は、若い地球と同じような条件を持つ可能性があり、グローブボックスをはるかに超えるスケールで生命の起源に関する仮説を検証するのに最適な場所だ。地球上の生命の起源を説明するのに役立つだけでなく、他の惑星で生命を探す際に、科学者が何を期待すればよいかを示してくれるかも知れない。


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masapoco

TEXAL管理人。中学生の時にWindows95を使っていたくらいの年齢。大学では物理を専攻していたこともあり、物理・宇宙関係の話題が得意だが、テクノロジー関係の話題も大好き。最近は半導体関連に特に興味あり。アニメ・ゲーム・文学も好き。最近の推しは、アニメ『サマータイムレンダ』

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