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世界初、牛の糞尿から作られた燃料で動くトラクター

New Holland Agricultureは、牛の糞尿を燃料とする新しいトラクター「T7 Methane Power LNG」を発表した。このトラクターは、ディーゼルトラクターと同等のパワーとトルクを持ちながら、排出ガスを大幅に削減できるという。

New Holland AgricultureがイギリスのBennamann社と提携したこのシステムでは、農家が牛の糞をスラリーとしてできるだけ多く集め、直接肥料として使うのではなく、大きなタンクや蓋付きのラグーンに汲み上げる。嫌気性生物はこの塊りを食べ、主にメタンを含むバイオガスを発生させる。

このガスを回収し、精製してバイオメタンとすることで、天然ガスが通常使用される場所であれば、農場内で使用することができるようになる。また、圧縮・液化してLNG(液化天然ガス)にすることもできるが、LNGは-162℃の低温タンクで保管する必要がある。これは製品として売り払われるか、特別に作られたエンジンを動かすために直接使われる。ガスを生成して残った固形物は、肥料として利用される。

T7 Methane Power LNGは現在コンセプトトラクターだが、New Holland社によると、LNGで走るように設計された世界初のトラクターで、農家が自分たちで燃料を作ることができるのだそうだ。

ただし、以前の研究によると、バイオメタンの生産と販売は、バイオガスの精製と液化に高価な装置が必要なため、約3,600頭以上の牛を飼う場合にのみ経済的に意味を持ち始めるようだ。Bennamann社は、農場から農場へと移動することができ、定期的に捕獲したバイオガスをLNGに変換する移動式装置を提供することで、この問題を解決しているとのこと。また、LNGを低温に保つための低温タンクシステムも販売している。

ある頭数の牛からどれくらいのLNGが得られるのか、また、このようなシステムはどの程度で採算が合うようになるのか。これは、牛の品種や餌、牛舎や厩舎の中で糞尿を回収しやすい環境にいない、放牧地で過ごす時間などによって大きく異なってくる。このようなシステムが意味を持つかどうかは、個々の経営に大きく依存するだろう。しかし、Bennamannは、このアプローチは「どんな規模の畜産農場でも採算が合うように設計されている」と述べている。

しかし、環境面への影響は非常に大きい。メタンは、短期的には二酸化炭素よりもはるかに強力な温室効果ガスだ。20年という時間軸で見ると、空気中のメタン1kgは二酸化炭素1kgの80倍以上の温室効果をもたらす。ただ、メタンは分解が早いので、二酸化炭素レベルで影響を与えるには数千年という時間軸が必要となる。

牛のフンから排出されるメタンを回収してLNGにし、トラクターのエンジンにかけるというのは、完全にクリーンなプロセスとは言えない。トラクターの排気ガスにはまだ二酸化炭素が含まれているのだ。しかし、大量のメタンを効率よく回収して二酸化炭素に変え、トラクターを動かすための化石燃料を燃やさないようにすることで、環境面では格段に有利になる。New Hollandによれば、「120頭の牛を飼養する農場のCO2削減量は、欧米の一般家庭の約100世帯分に相当する可能性がある」という。

また同社は、農家が完全に作業をコントロールし、データに基づいた意思決定を行うことができるようになることで、これらの重要な要素が生産性と持続可能性をさらに向上させるとしている。


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masapoco

TEXAL管理人。中学生の時にWindows95を使っていたくらいの年齢。大学では物理を専攻していたこともあり、物理・宇宙関係の話題が得意だが、テクノロジー関係の話題も大好き。最近は半導体関連に特に興味あり。アニメ・ゲーム・文学も好き。最近の推しは、アニメ『サマータイムレンダ』

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