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2022年ノーベル物理学賞が贈られた「量子もつれ」とは何か?物理学者がこの奇妙な現象を説明

2022年のノーベル物理学賞は、あらゆる自然現象の中で最も謎に包まれた現象の一つである「量子もつれ」の解明に画期的な貢献をした3人の科学者に贈られた。

量子もつれとは、簡単に言えば、量子もつれのペアのうち、一方の粒子の側面が、もう一方の粒子の側面に依存することを意味する。例えば、電子や光子などの粒子は、ある方向に「回転」しているか、別の方向に「回転」しているかといった状態にある。

量子もつれの不思議なところは、もつれたペアの一方の粒子について何かを測定すると、たとえそれが何百万光年も離れていたとしても、もう一方の粒子についてもすぐに何かがわかることだ。2つの粒子の間のこの奇妙なつながりは瞬時であり、一見、宇宙の基本法則を破っているかのようである。アルベルト・アインシュタインは、この現象を “spooky action at a distance(不気味な遠隔作用)”と名付けた。

私は20年以上にわたって量子力学に基づく実験を行ってきて、その奇妙さを受け入れるようになった。精密で信頼性の高い装置と、今年のノーベル賞受賞者であるアラン・アスペ、ジョン・クラウザー、アントン・ツァイリンガーの研究により、物理学者は量子現象を非常に高い確度で世界の知識に統合できるようになったのだ。

しかし、1970年代までは、量子もつれが本当に起こるのかどうか、研究者の間でも意見が分かれていた。アインシュタインが量子もつれを疑っていたのだから、誰が反論しようというのか。新しい実験技術の開発と大胆な研究者によって、この謎はようやく解き明かされたのである。

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量子力学では、粒子は観測されるまで2つ以上の状態を同時に持つ。この効果は、シュレーディンガーの有名な思考実験「死んでいる猫と生きている猫が同時にいる」で鮮明に捉えられている。(Image Credit: Michael Holloway/Wikimedia Commons, CC BY-SA)

複数の状態を同時に存在させる

量子もつれの不気味さを真に理解するためには、まず量子重ね合わせについて理解することが重要である。量子重ね合わせとは、粒子が一度に複数の状態で存在するという考え方である。そして、重ね合わせ状態の粒子を測定すると言う行為は、あたかも重ね合わせの中の1つの状態を選択するようなものである。

例えば、多くの粒子にはスピンと呼ばれる属性があり、分析器の向きが変わると「上」か「下」のどちらかに測定される。しかし、粒子のスピンを測定するまでは、粒子は同時にスピンが上と下の両方の状態をもつ重ね合わせの状態で存在する

それぞれの状態には確率があり、多くの測定から平均的な結果を予測することが可能である。一回の測定でアップかダウンになる可能性は、これらの確率に依存するが、それ自体は予測不可能である。

非常に奇妙ではあるが、数学と膨大な数の実験により、量子力学が物理的現実を正しく記述していることが示されている。

もつれ合った2つの粒子

量子もつれの不気味さは、量子重ね合わせの現実に起因しており、1920年代から1930年代にかけて理論を構築した量子力学の創始者たちには明らかであった。

もつれた粒子を作るには、基本的にシステムを2つに分割する必要があるが、このとき、それぞれをあわせると0になると言うことが知られている。例えば、スピンが0の粒子を2つの粒子に分割すると、スピンは必ず互いに反対になり、和が0になるのだ。

1935年、アルバート・アインシュタイン、ボリス・ポドルスキー、ネイサン・ローゼンは、宇宙の基本法則に異議を唱える量子もつれの一見不条理な状況を説明するために設計された思考実験についての論文を発表した。

この思考実験の簡略版は、デイヴィッド・ボームによるもので、π中間子と呼ばれる粒子の崩壊を考察している。この粒子が崩壊すると、反対のスピンを持つ電子と陽電子が生成され、互いに遠ざかる。したがって、電子のスピンがアップであると測定された場合、陽電子のスピンはダウンであるとしか考えられないし、その逆もまた然りである。これは、たとえ粒子が何十億kmも離れていても同じことである。

もし、電子のスピンの測定値が常にアップで、陽電子のスピンの測定値が常にダウンであれば問題ないだろう。しかし、量子力学では、それぞれの粒子のスピンは、測定されるまではアップでもありダウンでもある。これは、光速よりも速く移動する何らかの手段によって、粒子が互いに通信していることを示唆しているように思われる。しかし、物理学の法則によれば、光速より速く移動できるものはない。ある粒子の状態を測定しても、宇宙の果てにある別の粒子の状態を瞬時に決定することはできないのだろうか?

アインシュタインを含む物理学者たちは、1930年代に、量子もつれの解釈について様々な提案を行った。彼らは、「隠れた変数」と呼ばれる未知の性質が、測定前の粒子の状態を決定していると考えたのだ。しかし、当時の物理学者には、量子論に隠れた変数を含める必要があるかどうかを検証する技術も、明確な測定の定義もなかった。

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アイルランドの物理学者であるジョン・ベルは、量子もつれが隠れた変数に依存しているかどうかの現実をテストする手段を思いついた。(Image Credit: CERN
CC BY)

理論の反証

しかし、その答えが見つかるのは、1960年代になってからである。アイルランドの天才物理学者で、ノーベル賞を受賞するまでには至らなかったジョン・スチュワート・ベルは、「隠れた変数」という概念が意味を持つかどうかを検証するための方法を考案した。

ベルは、現在「ベルの不等式」として知られている方程式を作り出した。この方程式は、隠れた変数理論に対しては常に正しいが、量子力学に対しては必ずしも正しくないというものである。したがって、もしベルの方程式が実際の実験で満たされないことがわかれば、局所的な隠れた変数理論は量子もつれの説明として除外することができるのだ。

2022年のノーベル賞受賞者たち、特にアラン・アスペの実験は、ベルの不等式を検証する最初の実験であった。この実験では、多くの思考実験に見られるような電子と陽電子のペアではなく、もつれ合った光子が用いられた。その結果、「隠れた変数」と呼ばれる、もつれた粒子の状態を決定してしまう不思議な属性の存在を否定することに成功した。これらの実験とその後の多くの実験を総合すると、量子力学の正当性が証明されたことになる。量子力学以前の物理学では説明のつかない方法で、物体は遠く離れても相関することができるのだ。

重要なのは、光よりも速い通信を禁じている特殊相対性理論との矛盾がないことである。遠距離での測定に相関があるからといって、粒子間の情報伝達が行われるとは限らない。遠く離れた二者がもつれ合った粒子の測定を行ったとしても、その現象を利用して光速よりも速い情報を伝達することはできない。

現在、物理学者は量子もつれの研究を続け、実用的な応用の可能性を探っている。量子力学は、測定の確率を驚くほど正確に予測することができるが、多くの研究者は、量子力学が現実を完全に記述しているのかどうか、いまだに懐疑的である。しかし、ひとつだけ確かなことがある。量子力学の謎は、まだまだ解明されていないのだ。

本記事はThe Conversationに掲載された記事「What is quantum entanglement? A physicist explains the science of Einstein’s ‘spooky action at a distance’」について、Creative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、翻訳・転載しています。

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この記事を書いた人

TEXAL管理人。学校の授業でMS-DOSを使っていたくらいの年代。Windows95の登場で衝撃を受け、テクノロジー業界に興味を持つ。以来ガジェット・ゲーム情報を追い続けてうん十年。大学では物理を専攻していたこともあり、物理・宇宙関係の話題も大好き。

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