※この報道について、ウィリス氏の代理人が否定のコメントをBBCに対して発している。
映画『ダイ・ハード』シリーズで有名なアメリカの俳優 ブルース・ウィリスが、自身の肖像権を商業ビデオ制作用に販売し、「デジタル・ツイン」の製作が可能になったと、Daily Mailが報じている。これにより、ウィリスは今後コマーシャルや、場合によっては映画にもデジタル出演できるようになり、そして、すでにこの技術を使ってロシアのコマーシャルに出演しているようだ。
- Daily Mail: Bruce Willis sells rights to permit deepfake ‘digital twin’ of himself to be created for use on screen – allowing him to come out of retirement after aphasia diagnosis
- The Telegraph: Deepfake tech allows Bruce Willis to return to the screen without ever being on set
- Endgadget: A Bruce Willis deepfake will appear in his stead for future film projects
ウィリスは今年初め、自身が失語症である事を明らかにし、俳優業から「身を引く」ことを発表していた。だがその後、彼はDeepcakeという会社を通じて、自身のデジタル・ツインを映画などの映像作品に登場させる予定だという。同社はグルジアのトビリシに本社を置き、デラウェア州で法人登記をしながらアメリカでビジネスをしている。
Deepcakeは、ウィリスの顔をディープラーニングニューラルネットワークモデルに学習させることで、ウィリスの顔の詳細なデジタルデータを取得した。これによって、体格の似た別の俳優にウィリスの頭部を当てはめることができ、一般に“ディープフェイク(Deep Fake)”と呼ばれるプロセスを経て、あたかもウィリス本人が演技をしているかのような映像の作成を可能にするとのことだ。このディープフェイクについては、近年、様々な著名人を扱ったもの(中には全くそういった作品に登場したことのない女優をアダルト作品に登場させる悪質なものなど)が出回っており、問題となっているが、今回のウィリスについては“本人公認”となる。
ウィリスはDeepcakeのウェブサイト上の声明で、次のように述べたという。
自分のキャラクターの精密さが気に入りました。時間をさかのぼるいい機会です。ニューラルネットワークは、『ダイ・ハード』や『フィフス・エレメント』の内容で(トレーニング)されているので、私のキャラクターは当時のイメージに近いです。
現代のテクノロジーの出現により、私は別の大陸にいても、コミュニケーションをとり、仕事をし、撮影に参加することができるようになりました。これは私にとって全く新しい、興味深い経験で、チームに感謝しています。
Deepcakeによると、同社は映画業界などのキャスティングにおける現在の高額な価格設定を問題視しており、これの価格破壊を目指しているという。実際、従来の方法で必要となっていた、“旅費、高額な撮影日数、保険料などのコスト”について、同社の新しいプロセスを用いればこれらを差し引くことが可能となり、支払うのは、セレブのエージェントとの契約料とDeepcakeのサービス手数料のみになるとのこと。これによって、同社は業界のゲームチェンジャーになろうとしている。
The Telegraphの報道によると、ウィリスは「ハリウッドスターとして初めて、スクリーン上で使用するために自分自身の “デジタルツイン “を作成できる権利を売却した」としているが、Deepcake社とのライセンス契約を結んだと言う事になると、売却したと言うよりは、Deepcakeを通じて、映画やCMなどに出演することになり、完全にDeepcakeが彼の肖像権を自由に利用できるという形ではなさそうだ。
また、ウィリス自身、こういった試みには慣れているようで、1998年にはPlayStationのゲーム『アポカリプス』にデジタルキャラクターとして出演し、モーションキャプチャでシーンも演じている。そういった意味で、今回の件も抵抗がなかったのだろう。
最近、ダース・ベイダーの声をAIが担当した事例もあり、今後、ディープフェイクの技術が向上すれば、このような事例が増える可能性もありそうだ。