水あかを防ぐ方法を研究者が発見

masapoco
投稿日
2022年9月7日 13:25
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台所のシンクや浴室、洗面台、鏡など、水回りに必ずと言っていいほどついて回る悩みと言えば、「水あか」だ。鏡やガラスと白く曇らせるこの厄介な水あかは、どうやらこれまで考えられていたよりも複雑なメカニズムだったようだ。

今回、ドイツのフリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルク(FAU)の研究者が率いる国際的なチームによって、石灰化のメカニズムと、水あかの蓄積を根本的に防ぐために必要な物質を明らかにした。また、このことは自然界における、石灰生成に生物が与える影響についても明らかにしている。

グラスに残る乳白色の膜など、石灰化の前に発生する結晶は、水が乾いて固形物が残ることで形成される。これまで、食洗機用の洗剤では、リン酸塩を加えることで、食器洗機での水あか付着を防いできた。しかし、リン酸塩は肥料にもなるもので栄養価が高く、遅かれ早かれ排水を通して川や海へ運ばれることで、水を栄養豊富なものにする。その結果、ある種の藻類が急速に繁殖し、藻類の大発生を招き、他の生物や植物が大量に死滅する可能性があるのだ。

そういったこともあり、食器用洗剤へのリン酸塩の使用を控えることが叫ばれており、FAUの研究者であるPriv.Doz.ガラス・セラミックス学部のStephan E Wolf博士と理論化学のDirk Zahn教授が率いるFAUの研究者たちは、リン酸塩やその他の一般的な成分が、石灰の残留を防ぐ方法を調査した。今回の調査では結果として、複雑なメカニズムが具体的にどのように機能し、それらがどのように完璧に補完し合って、結果的に石灰の付着を防ぐのかを実証することができたとのことだ。

結果、リン酸塩とよく似た働きをしながらも、より環境にやさしい物質が提案された。この物質は、水あかの原因となる石灰の付着を妨害し、より無秩序にし、組織化された結晶がカルシウムイオンや炭酸イオンと結合して、安定した組織を形成するのを妨げる事に成功した。これにより、石灰の堆積を完全に防ぐか、または構造が無秩序化されることで溶解しやすくなり、結果的に除去しやすくなるとのことだ。

また、研究チームは、石灰の沈着を防ぐメカニズムを解明しただけでなく、石灰がどのように形成されるのかについて新たな知見を得ることも出来たという。「石灰ができるプロセスは、私たちが想像していたよりもずっと複雑であることがわかりました」と、Dirk Zahn教授は説明する。

この新しい知見は、自然界における石灰生成に生物が与える影響についても理解するのに役立つ。例えば甲殻類は、殻を形成して生き残るために、石灰の生成をコントロールする必要がある。「特に気候変動を考慮すると、サンゴや貝、海産腹足類など、石灰を分泌する生物を十分に保護するためには、何が特に有害なのかを理解しなければなりません」と、Wolf博士は述べている。


論文

参考文献

研究の要旨

低分子量(MW)添加剤は非晶質炭酸カルシウム(ACC)に強い影響を与え、生物起源、地質起源、および工業的石灰化においてとらえどころのない役割を果たしている。ここでは、これらの添加剤がCaCO3溶液と固体ACCの安定性と組成を制御する分子機構を紹介する。強力なアンチスカルファントは、前核形成クラスター(PNC)と相互作用することによってACCの沈殿を阻害する。これらの添加剤は、PNCを特異的に誘発し、PNCに統合させるか、あるいはPNCの成長を積極的に促進させる。PNCと相互作用する添加剤のみがACC中で追跡可能であり、結晶化に対してACCをかなり安定化させる。PNCへの強力な添加剤の選択的取り込みは、信頼できる化学的標識であり、ACCがPNC由来の分子性沈殿物であるという決定的な化学的証拠を提供する。我々の結果は、既成のメカニズム概念を超えた添加剤-クラスター相互作用を明らかにした。この結果は、結晶化とバイオミネラリゼーションにおける低分子量分子の役割を再評価すると同時に、持続可能な新しいアンチスカラントへの道を開くものである。



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