太平洋に集まるプラスチックごみの多くを排出している上位5カ国が判明

masapoco
投稿日
2022年9月2日 10:25
41598 2022 16529 Fig1 HTML

海洋プラスチック問題は現在進行中だが、これらのゴミが一体どこから来ているのかを明らかにすることは、問題を解決する一助となるだろう。

我々の国、日本が接する太平洋には、「太平洋ゴミベルト」と呼ばれる、海流の影響によって海洋プラスチックがたどり着く“墓場”があるのだが、今回ある研究によって、世界の漁業がこの問題に大きく関与していることが明らかになった。

太平洋ゴミベルトに集まるゴミの多くが“漁業由来”だった

データサイエンティストのLaurent Lebreton氏と彼の同僚は、「北太平洋の亜熱帯循環に漂うプラスチックのほとんどが、先進5カ国の漁業に由来することを明らかにした」と報告している。

これまでの調査で、太平洋ゴミベルトに集まったプラスチックの約半分は漁網とロープであり、残りの大部分は硬質プラスチックや小さな破片であることが分かっていた。漁網が漁業に由来するのは明らかだが、その他の硬質プラスチックがどこから来たのかはこれまで明らかではなかった。

2019年にLebreton氏と、自然保護団体のThe Ocean Cleanupが収集した573kgの(乾燥した)硬質プラスチック破片を分析したところ、その4分の1以上が「放棄、紛失、その他で捨てられた漁具」(別名ALDFG)の破片である事が判明した。

この廃棄物カテゴリーには、カキ用スペーサー、ウナギ用トラップ、ロブスターや魚のタグなどのアイテムや、プラスチック製の浮き輪やブイなどが含まれている。

また、3分の1のゴミは正体不明だった。

著者らはコンピューターモデルを用いて、プラスチック片がどのように到達したかをシミュレーションしたところ、陸上のものよりも漁業に由来するものの方が10倍も多いことを発見したという。

実際、また、河川に投棄された廃棄物は、シミュレーションにより海岸にたどり着く可能性が高いことも判明したとのことだ。河川から海流にのって沖合に流れ着く廃棄物は、全体の2%に過ぎないという。

一方、トロール漁業で用いられる漁具の廃棄物の21パーセントと固定漁具の廃棄物の15パーセントは深海に漂い、それらの粒子の85パーセント以上がシミュレーションで陸地に到達することはなかったとのことだ。

また、研究者が分析した232個のプラスチック製品のうち、およそ3分の2は日本か中国で製造されたものだった。残りの10%近くが韓国製、6.5%が米国製、5.6%が台湾製、4.7%がカナダ製だったとのことだ。これらの国はいずれも水産業が盛んである。

「漁業からの投入物などの海洋資源は、一般に年間約50万トン(プラスチック廃棄物)とされてきたが、長年にわたって繰り返し引用されてきたこの推定値は、1970年代にさかのぼる初期の研究から誤った解釈がなされていた。それ以降、最近のより信頼できる推定値は提案されていない。」と著者は報告している。

海に漂う5センチ未満のプラスチックの破片の起源を追跡することは困難だ。例えば、漁網には通常、文字が書かれていない。また、劣化が激しくて形が似ていないものや、単純に小さすぎるものもある。

しかし、5cm以上の硬いプラスチックには、ブランド名や社名が残っていることがあり、数文字でその由来が分かることがある。

今回の研究で、文字が確認できた約200個のプラスチック製品で、うち最も多く確認された言語は、多い順に中国語、日本語、英語、韓国語であった。

半数近くが20世紀の廃棄物だが、1966年にまでさかのぼるようなブイもあったという。

海流に沿った国際的な漁業活動をシミュレーションしたところ、中国、日本、韓国、米国、台湾は、漁業廃棄物の87%を太平洋ゴミベルトに提供していることが判明した。

日本については、漁業活動から推計されるゴミの量と比較すると、日本人が書いたゴミが予想以上に多く見られたとのことだが、これは、2011年の津波で日本から大量の廃棄物が海に流出したためと考えられるという。

「これらの5カ国は、陸上から海にプラスチックを排出する主要な貢献国として認識されておらず、代わりに、北太平洋の主要な漁業国として認識されていた」と著者らは書いている。

「漁業界からの透明性を高め、漁業廃棄物の発生を規制・監視するための各国間の協力を強化すれば、海洋プラスチックの『もう一つの蛇口』からの排出を減らすことができるだろう。」と、著者らは述べている。


論文

参考文献

研究の要旨

北太平洋の亜熱帯海域のジャイルは、現在、数万トンのプラスチック破片で覆われ、数百万平方キロメートルの範囲に分散している。その大部分は漁網やロープで構成され、残りの大部分は硬質プラスチックの物体や破片で構成され、時にはその起源に関する証拠を含んでいることもある。2019年、この地域で実施された海洋調査ミッションでは、5cm以上の硬質プラスチック破片を6,000個以上回収した。その後、破片を分類し、数え、重量を測定し、起源と年代の証拠を得るために分析した。数値モデルによるシミュレーションと以前の海洋調査から得られた知見で補完した結果、浮遊物の大部分は漁業活動に由来することが明らかになった。最近の海洋へのプラスチック投入に関する評価では、沿岸の発展途上国や河川が海洋プラスチック汚染の主な原因とされているが、ここでは、北太平洋亜熱帯ジャイアにおける浮遊プラスチックのほとんどが先進漁業国5カ国に由来することを示し、この地球規模の問題の解決において漁業が果たす重要な役割を強調する。



この記事が面白かったら是非シェアをお願いします!


  • ljNULsd
    次の記事

    Xbox Game Pass ファミリープランが一部地域で提供開始、価格も判明

    2022年9月2日 10:53
  • 前の記事

    Leicaが超短焦点プロジェクター「Cine 1」を発表

    2022年9月2日 10:22
    leica laser

スポンサーリンク


この記事を書いた人
masapoco

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


おすすめ記事

  • 59349164314eea1e41dc441183b8ca5a

    AIの過剰な水消費は環境への貢献を帳消しにするかも知れない

  • sand

    フィンランドで従来規模の10倍となる新たな砂電池が建設、町全体の暖房を1週間まかなう事が可能に

  • well water

    人類は世界中で地下水を枯渇させているが、地下水を補充することで状況を改善させられるかも知れない

  • cloudy sunny

    太陽光を宇宙に反射させて地球を冷やすというのは、危険な気晴らしだ

  • news water battery 1220px

    発火も爆発もせず環境にも優しい世界初の「水電池」が開発された

今読まれている記事