世界中で問題になっている「永遠の化学物質」を簡単、そして安全に破壊する方法が発見された

masapoco
投稿日
2022年8月20日 6:30
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ノースウェスタン大学の研究グループは、環境破壊や人体への影響が懸念される悪質な汚染物質である「永遠の化学物質」の最大のグループの1つを、安全で簡単に、そして低エネルギーで分解する方法を発見したことを発表した。

実用化はまだ先だが、この驚くべき発見は、多くの科学者が畏敬の念を抱くに足る物だろう。

詳細なシミュレーションでは、PFAS分子(炭素-フッ素結合が非常に強く、よほどのことがない限り壊すことは不可能と考えられていた長鎖の合成化学物質)が、特定の穏やかな条件下で素早く「分解」されたのである。

ノースウェスタン大学の化学教授であるWilliam Dichtel氏は、記者会見で、「これらの物質がどのように分解されるかという基本的な知識は、おそらくこの研究から得られる最も重要なものの一つでしょう」と語った。

研究グループによると、彼らが発見した方法によって、PFAS(パーフルオロアルキル)化学物質の主要な種類の1つ、カルボン酸を含む化学物質(略してPFCAと呼ばれる)を分解するとのことだ。

PFASは悪名高い物質だ。開発された当初は、水や脂肪をはじく性質があるため、ノンスティック剤や防水剤として有効活用されてきた。だが、その後、我々の血液に混入し、慢性的な暴露によって健康被害を引き起こすこと、そして、簡単には分解せず、恐ろしいレベルで環境中に残留することが明らかになり、世界中で問題になってきている。

水源から安全でないレベルのPFAS汚染が検出された多くの研究があることから、飲料水からPFASをろ過する様々な技術の開発が急がれているが、成功率はまちまちだ。

しかし、結果的にPFASをろ過出来たとしても、分解されずにそのまま残ってしまうため、その廃棄方法にはほとんど選択肢がない。高温によって分解されるが、元々熱に強いPFASを分解するにはかなりの高温が必要となり、その為には費用がかかり、さらに汚染物質をさらに拡散させるリスクもあった。

今回、研究グループは、安価な試薬を使い、無害な炭素含有分子とフッ化物イオンだけを残し、穏やかな温度でPFASを分解する画期的な低エネルギー・プロセスを開発したという。

鎖長の異なるPFCA分子を用いて低エネルギー法をテストしたところ、そのうちの10種類を分解することに成功したとのことだ。そのコツは、PFCA分子の末端にある帯電した酸素原子のグループをターゲットにすることだった。

PFASには、屈強な炭素-フッ素結合が長い尾を引いている。しかし、分子の一端には帯電した基があり、その基には帯電した酸素原子が含まれていることが多い。Dichtel氏のチームは、PFASの破壊には珍しいジメチルスルホキシド中のPFASを、一般的な試薬である水酸化ナトリウムで加熱し、この頭部基をターゲットにしたのだ。このプロセスによって、反応性のある尾部を残して頭部が切断された。

「これがきっかけとなり、これらの化合物からフッ素原子が吐き出され、最も安全なフッ素の形態であるフッ化物が生成されます。炭素とフッ素の結合は非常に強いのですが、電荷を帯びた頭部がアキレス腱なのです。」とDichtel氏は説明する。

研究チームは、コンピューター・シミュレーションを使って、複雑な化学反応の連鎖を解きほぐし、副生成物が比較的無害であることを確認し、自分たちが良い方向に向かっていることを確信した。この分子は、いったん不安定化すると、ほぼすべてのフッ素原子が取り除かれた。

コンピュータ・モデリングは、「このような反応を図式化し、場合によっては最適化する方法を初めて提供し、我々が本当に安全な製品だけをもっともらしく作っていることを証明してくれました。これには、自然界に存在し、健康への深刻な懸念を引き起こさない小さな炭素を含む製品が含まれます。」と、Dichtel氏は説明する。

研究者らは、別のクラスの新しいPFASについてもこのプロセスが機能することを実証したが、地球の地表に存在する水がかなり汚染されている現状に警鐘を鳴らしている。既に、世界中の雨水は口に出来ないレベルで汚染されていると報告されており、生物への健康被害も深刻になってきている。

しかし、米国環境保護庁が現在までに認定したPFASは12,000種類以上あるため、これらの分子の基本的な反応性を理解し、同様の方法で分解できるかどうかについては、まだ多くの研究が必要である。

また、PFASが健康に及ぼす影響の範囲や、環境中のどこに残留しているのかを解明することも同様だ。



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