ヒトの免疫システムについて完全な接続マップが世界で初めて作成され、新たな創薬に繋がる可能性

この度、イギリスとスイスの研究グループによって、人体の個々の細胞間で行われている情報のやりとりを調べるために、高度なスクリーニング方法を用いることで、ヒトの免疫システムに関する完全な接続マップを世界で初めて作成したことを科学誌「Nature」に発表した。この新しい接続マップは、研究者が癌などの異なる病気の進行方法をより深く理解し、更にそれに対する身体の防御機能を強化する次世代治療法を開発するのに役立つとされている。

この画期的な発見は、さまざまな免疫細胞の間で行われるシグナル伝達についての新たな理解からもたらされたものだ。免疫細胞の中には、体内をパトロールして傷害や病気の兆候を探し、他の免疫細胞にメッセージを送って戦いに参加するものがある。この情報伝達の一形態として、免疫細胞の表面にあるタンパク質が、他の細胞の表面にある受容体タンパク質と結合して行われる物がある。

これらの受容体の結合の一部はすでに科学的に知られていたが、ウェルカム・サンガー研究所チューリッヒ工科大学の研究者は、体内の受容体の結合をより包括的に示す“接続マップ”の作成に取り組んできた。この成果は、数十年の歳月をかけ、最近の技術の進歩によって初めて可能となったもので、ハイスループット表面受容体スクリーニングと呼ばれる技術が用いられている。この技術により、研究チームは免疫細胞のタンパク質相互作用を前例のない規模で系統的にマッピングすることができた。

ウェルカム・サンガー研究所の筆頭研究者である Jarrod Shilts氏 は、「全ての免疫細胞とその相互作用を丹念に分離・分析した結果、人体内の全ての免疫細胞間の会話に関する初めてのマップを得ることができました。これは、免疫システムの内部構造を理解する上で大きな一歩であり、世界中の研究者が、身体の防御機構に働きかける新しい治療法の開発に活用できるようになることを期待しています。」と語っている。

この接続マップは、免疫細胞が、体中でどのようにつながり、通信しているかを詳細に示しており、これまで知られていなかった相互作用の情報も含んでいる。これは、身体が免疫防御を組織化する方法についての貴重な新しい洞察を提供し、癌に対する免疫療法を代表例として、病気と戦う能力を高める治療法を開発する取り組みに役立つかもしれません。

主任研究者のGavin Wright教授は、「免疫療法は、がんや自己免疫などの病気と闘うために、身体の免疫系に働きかけるものです。免疫療法は、ある特定のグループには非常に有効ですが、すべてのグループには有効ではなく、治療ができない人もいます。20年以上にわたる研究の集大成である我々の研究は、なぜこれらの治療法がある集団でより効果的なのか、また、できるだけ多くの人が治療法の恩恵を受けられるようにするにはどうすればよいのかを理解する鍵を握っていると言えます。」と述べている。

さらに、このマップによって、自己免疫疾患の予防と治療の青写真を提供することが可能となる。さまざまな疾患が免疫系に及ぼす影響を詳細に観察し、特定の表面タンパク質を標的とした新しい治療法を調整する能力は、医学の領域で強力な新兵器になると思われる。

チューリッヒ工科大学のBerend Snijder教授は、「この研究は、医薬品開発において、どのタンパク質や経路を標的とするのが有益であるかを明らかにするために使用できる、驚くべき新しいツールを生み出しました。また、ある薬が他の経路に影響を及ぼし、副作用を引き起こす可能性があるかどうかについても知ることができます。これらの情報は、新しい治療法の開発に役立ち、最も効果的な治療法が臨床試験に導入されることを確実にするための重要な裏付けとなる可能性があります。」と語っている。

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この記事を書いた人

TEXAL管理人。学校の授業でMS-DOSを使っていたくらいの年代。Windows95の登場で衝撃を受け、テクノロジー業界に興味を持つ。以来ガジェット・ゲーム情報を追い続けてうん十年。大学では物理を専攻していたこともあり、物理・宇宙関係の話題も大好き。

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